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深い眠りの中で見る夢のように、目の前の出来事よりもさらに手前の段階にあるはずの、前提が揺るがされるほどの没入感を、自在に発生させることができたらいいのにな、と思います。

作品行為によって、なかなかいいところまでいく場合もあるのですが、どうしても「自分が日本語でものを考えている」ということが楔になって、そこから先に進むことができないという感覚があります。

一方で、その楔があるからこそ、もとのつまらない現実世界に戻ることができてしまう訳なのですが、これをいくつかの条件をクリアすることで、解錠することができるのではないかという淡い期待も、あるにはあります。

そうでなくては、今まで生きてきて、何も私の中に残らなかったことのバランスが取れません。私が生きてきたことで、今も心に残っているものが、何もありません。全てが無意味な徒労で、どんな喜びもその場限りのまやかしでした。しかし、これは私に限った感覚ではないのかもしれません。