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言葉は思考の可能性を規定するという表現があります。

思考そのものは決して人間の脳の内側から噴出することはなく、それを元に肉体を経由して発せられる情報が、その内容を不完全ながらも伝えます。

すると、湧き上がる言葉は、肉体を経由して放出されるもの、例えば舞踏によって発せられるものと同じ性質を持つことになります。

同時に思考はその放出されたものの影響をさらに受けて、変化します。その変化が放出にさらに影響を与えます。

語彙や文法は当然に思考の可能性を規定しますが、それにたいして文脈や物語というものが、どの程度思考の可能性に影響を与えるのかについて、興味があります。

こうして自分の思考を、肉体から言葉を経由して、また肉体から思考へフィードバックするということが、国や育ちによってかかる制限をどの程度取り払うことができるのか、それとも思考をさらに凝固させることへ働いてしまうのかを試します。